立ち止まっている暇は、セレイアたちにはない。

慎重に、セレイアたちは階段をのぼりはじめた。

階段にはもちろん手すりがついていたが、その高さは腰丈程度と低めで、一歩足を踏み出すたび体がすくむ。

びゅうびゅうと唸る風は強く、気を抜くと吹き飛ばされてまっさかさま―という不安が常につきまとった。

それでも立ち止まってはいられない。

ここからは無言で、階段をのぼり進めた。

「うおりゃあああ!」

突然、階段の先から兵が一人セレイアに斬りかかってきた。

こんなところまでたどり着くなど、相当胆力のある兵士に違いない。

しかしセレイアは彼の攻撃を軽くあしらい、槍の柄で簡単に昏倒させてしまった。

胆力と武力は別のもの、だ。

「セレイアは、ほんとに強いな……」

ぼそりとポックが呟く。

「ありがと!」

褒められた、ということにしておきたかった。