ふわりと優しい晴れた日の雪原の匂いがする。

安心する、彼の匂い。

セレイアはぎゅっと、力いっぱい、彼の背中にしがみつく。

「セレイア……?」

その声を聞いたら、なんだか泣き出してしまいそうだった。

数日しか離れていない。

けれどもう何年も会えなかったくらいに、この声が、気配が、体温が、恋しい。

「セレイア…本当にセレイアなの?」

彼の声は頼りなく震えている。

きっと彼も同じ気持ちでいてくれるのだと、今なら確信できる。

声にならなくて、セレイアはディセルの胸に顔を埋めながら、何度も何度も頷いた。

遠慮がちに宙をさまよっていたディセルの腕が、不意にセレイアを抱きしめる。

ぎゅっと、力強く。

そして心の底から絞り出すようにして言った。

「………心配した!」

知ってる、と思った。

ディセルがどれだけ心配したか。

自分も逆の立場だったらどれだけ心配するか、わかるから。

ポックに無事を知らされたところで、安心できなかっただろう。心配で心配で、きっと夜も眠れなかったに違いない。

けれど再会してみるとどうだろう。

これほど安心できることはない。

何も怖いものがないと思えるくらい、ディセルの腕の中で、セレイアは安心することができた。

(私の居場所は―――――ここ)

そしてディセルの居場所もまた、ここなのだと、セレイアにはわかっていた。