「じゃあ、少し話すか」

ポックは本当に心優しい。

「…いいの?」

「もちろん」

にっと明るく笑う彼に、心癒される思いがした。

セレイアはお言葉に甘えて、彼と少し話すことにした。たき火のそばに行き、ポックの隣に腰掛ける。

ポックはこんなに小さいのに、頼もしい。

なんて小さいなどというと、きっと怒られてしまうけれど。

「セレイアは、人間界では何をしていたんだ?」

「トリステアっていう雪の王国でね、祭祀関係の仕事、姫巫女をしていたわ。
でも、そこで記憶喪失のディセル―ええと、スノーティアスに出会って…天上界に彼を帰すために、旅をすることになったの」

「どんな旅だった?」

セレイアはちょっと息を詰め、言葉を選んだ。

ディセルとの旅がどんな旅だったか……。

ここにこうしていると、ほんの少し前のことなのに、懐かしく思えて仕方がない。

「…そうね。ディセルのためって言うのはもちろんだけど、新しい自分をみつけるための旅だったかもしれない。
私はね、姫巫女って言う仕事にとても大切な、神様から予言を聞く力がなかったの。それでもみんなをだまして、姫巫女をやっていたのよ。ずっとそれが後ろめたかったから…その気持ちを打破する何かがみつけられる気がしてた。旅の中で」

「それはみつけられた?
旅はもう終わったんだろう?」

「そうね……」

セレイアは少し遠い目をして、しばし黙った。