彼は、この“庭”が好きだった。

とめどなく降り積もる雪で、真っ白に光輝く“庭”。一粒一粒の雪が淡い光を放ち、神殿を、森の木々を、凛と彩っている。

この天上界のどこをさがしても、こんなに美しい場所はないと思う。

だから彼は、大抵いつも、この庭にいた。

いることをなんとか許されていた、と言った方が正確かも知れない。

彼には居場所など、本当はなかったから。

何もかもが異端の、彼には。

しかし能力も姿も異端の彼であっても、今天上界を襲う異変には気が付いていた。

異質な存在の侵入だ。

むろん、異端の彼が異質を語るのも、どうなのかわからないが。

「一体何がどうなってるんだ」

言葉にして呟き、樹氷の森を進んでいると、不意に木の影から複数の人影が飛び出してきた。

鎧兜を身にまとった若い男たちだ。

その存在感は、明らかにこの世界にそぐわぬ、異質なもの。