「……麻璃。」
「…う、ぅ。」

やり過ぎたか…。
自分が相手の体力を考えずにしてしまったことを反省して、抱き締めた。

「奏太さん……。」
「ん?」

反応がない………。寝言かよ。
俺は麻璃に毛布を掛けた後、まだ終わってない洗い物に取り掛かった。

ここまで深まったのなら、後戻りも出来ないしする気も無い。
本当に自分は彼女を卒業するまで大切にしようと、心に誓った。
卒業したらそこからの2人の進路を考えよう。

そう考えながら洗い物を終え、次に風呂の準備をしようとしたその時。
後ろから腕を回され、抱き着かれていた。


「……。」
「…起きたのか?」

コクリと頷くのがわかった。
振り返って視線を合わせると眠そうにしていた。
その表情も愛おしく感じた。

「一緒にお風呂はいる。」
「どうした、突然。」
「はいろ。」

甘やかすのはあまり良く無いが、可愛いから今回は良しとして一緒に浴室へ向かった。

「俺、身体洗ったりするから浸かってな?」
「最初からそのつもり。」

そう言って直ぐに浴槽に身体を沈めた。
眠気がまだ抜けないのか目を細めながら気持ちよさそうにしている。



自分のことを済ませ、浴槽に足をいれると麻璃はくっついて来た。

「動けないってば…。」
「動ける。」
「動けないから言ってるんだよ……。」

大分困って来た。
この子は眠いと駄々っ子になるのか。
俺は頭を抱えながらも慎重に入った。

「んー。」
「はいはい。」

腕を回して抱きついて来る彼女を抱えた。
髪の毛…良い匂いする……。
抱き締めるとやはり細くて、心配になる。
すると耳元で麻璃が話し始めた。

「私、幸せだ。」
「本当?」
「うん。でも、怖い。」
「……。」

怖い、か。
先程自分が考えていたことを思い出した。

「いつかバレる事を考えると怖くて。好きなのに、不安。こうする事が出来なくなる事が怖い。」

少しずつ声が震え始めている事に気付いた。
彼女も彼女で考えていたのだ。
お互いそう考えていたのなら、まだ自分達には未来がある気がした。
俺は麻璃と顔を向かい合わせて、唇をそっと重ねた。


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