「…あ、来たの?いらっしゃい。」

あれ…眼鏡かけてる。
入ってみると読書をしていた奏太さんの姿があった。
べっ甲柄なのがオシャレで似合う…。

「なあに?見惚れてんの?」
「いやっちがぁっ」

ニヤニヤと、口を緩ませてこっちに近づいて来る。
何でも似合うから羨ましいな、なんて私は呑気に考えていた。

「似合ってる。」
「……突然ストレートに言ってくるのやめて。」
「似合ってるから、似合ってるっていっただけ。」
「馬鹿。」

そういいながら優しく抱き締めてきた。
聞こえた。奏太さんの心臓の音。
身長差が丁度良く、私の耳元が奏太さんの胸元に近いため響いているのが聞こえる。

「何してんの?」
「心臓の音が丁度聞こえて…。」
「え、耳澄まさなくていいよ。」
「奏太さんちょっと速くなってきてる。」
「だって緊張してるもん…。」

表情が見たくて顔を覗くと私の肩に顔を乗せ、隠した。

「ドキドキしてるのバレるの嫌じゃん。」
「でも今口にしたのでバレたよ。」
「わかってるよ。」

何だろう…。奏太さんより上の立場な気分。
たまにはこういうのも悪くないかも…。
すると、奏太さんがこっちに顔を向けて額をくっつけて来た。

「キスする?」

そう聞いてみると頬にキスしてきた。
…様子が本当におかしい。
私の質問に答える前に奏太さんは唇を重ねてきた。

「…我慢出来なくなってきた。」
「おかしいと思えばそれですか。」
「麻璃がいつも以上に可愛いから。」
「はいはい。」

彼が満足するまで口付けを交わした。
今日やたらこんなに甘えてくるとは思ってもいなかったため、私自身も凄くドキドキしていた。



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