「何?」
「いや、疲れた。」
「何かあったからでしょ。」

こいつにも軽く見透かされてる。
何で俺の周りはこうなんだ。
…良い匂いするし、落ち着く。

「…蓮。寝ないでね。」
「うるせ。」


去年の夏頃を思い出す。
図書館にどうしても麻璃は行きたくてそれに付き添いで行った。
あの時も窓側の席で、陽に当たりながら本を読んでいる麻璃の隣に居た。

やべー。いろいろ思い出しそう。


別れたあの日の言葉の出だしを思い出しそうになった瞬間俺は立ち上がった。

「麻璃。」
「…?」
「俺、……もし辛かったり無理だったりしたら戻って来て。」


好きだよとは言わなくて良い。
遠回しの言葉だけれど、今はこれでいいと思う。
…でもやっぱり触れたい。
寂しいんだろうなー。俺も俺で。

「ごめん。ハグしよ。」
「突然どうしたの。」

優しく抱き締めると去年の彼女とは体型が違くて細い体がまた細くなってた。
別れてから家のことが積み重なって何も出来なかったんだろうな…そう考えると胸が痛い。

「ちゃんと飯食えよ。」
「食べてるよ?」

きょとんとした彼女の顔を見て、俺は図書室を後にした。
チャンスが来たらちゃんと奪うさ。
それまでの辛抱だ。


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