外に出ると自分の車の陰に麻璃が隠れていた。

「何で知ってるの…。」
「帰る姿、たまに見てたから。」
「ふーん。」

ニヤリと笑いながら彼女を見ると、口を尖らせて恥ずかしがっている。
俺は鍵を開け、助手席のドアを開けた。

「はい。どうぞ。」
「うん。」

他の人に見られちゃあ面倒なので早々と学校を後にした。

「あのさ。」
「あの…。」

全く同じタイミングだった。
それがおかしくて笑いが止まらなくなった。

「あ〜。びっくりした。麻璃からどうぞ。」
「いや、せんせッ……奏太さんから…。」
「……俺は土日予定空いてる?って聞こうとしてただけ。」
「………空いてます。」

言葉と声は静かだが、仕草が物凄く嬉しそうで振り返るのが物凄く早かった。

「じゃあどっか行くから。」
「はい。」
「家の近くで降ろした方いいよね?」
「………。」
「帰りたくないよねー。」

嫌な場所には誰にだっていたくないし、そんなもんだよな。

「土曜日…泊まる?」
「え…。」
「泊まれば?」
「いいの…?」
「いや。いいでしょ。」

突然の発言に固まる彼女。
泊まることが恥ずかしいのか、顔が真っ赤になってきた。

「泊まる…。」
「うん。おいで。」

そうこうしているうちに、家の近くにまで着いた。
深呼吸をしていざ降りようとしていたのだがそれを止めた。

「…?」
「キスしよ。」
「ハッキリ言わないで。恥ずかしい。」
「まぁまぁ。」

そう言って交わすとすんなりくっ付いてくる。
寧ろ自分より彼女の方が欲しがっている様な感じだった。
時間も時間だったため気持ちに諦めをつけた。

「帰ろうか。」
「い…」
「わかるよ。てかアドレス聞いてないから教えて。」
「はい。」

差し出す画面を見ながら打ち込んでいった。

「家に着いたら送るから。ちゃんとご飯食べて風呂入って。」
「うん。待ってる。」

少しふくれっ面な彼女だったが、案外すぐに降りたから安心した。
勿論俺だって帰れない。心配で離れられない。
でも仕方ないから俺はその場を後にし、出発した。


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