弟は何も知らずに育って、私には「お姉ちゃん」と明るい笑顔を向けてくれていた。
私はちゃんとそれに答える。
弟のことは責めたりしない。
私が疑問なのは、親としてどうなのか。ということなのだ。

自分が寂しい思いをしたのなら、もし結婚をした時、産まれた子どもには満遍なく愛情を注ぎたい。

これで、いいのだ。

私を思ってくれて、一緒にいることが楽しく思ってくれる人がいるなら。


「なんて、…」

夢の話なんて情けない。
そう思い、私は自分に回されていた腕を優しく解いた。

「そうか……」
「気不味いとか今更でしょ。」
「いや、…」
「何。」

前髪をくしゃりとして俯いていた。
その仕草がとても大人で、素敵に見えてしまう。

「すげえ放って置けなくなるな。」

彼は、精一杯の笑顔でそう言った。
とても苦しそうな笑顔で。