夏が近付いているのか、今日は気温が高い。


部活の休憩中、屋外に設置された水盤に殺到した先輩たちを眺める。
私はというと、一年生があの戦乱の中へ飛び込むのは無理だし、選手でなくマネージャーだから後でも大丈夫だと判断して、近くの建物の陰で涼んでいた。



「凛ちゃん!ボール集めありがとー!あとこれ、スポドリ作ってもらえるかな?足りなくなっちゃって」
「はい!」



6つの空ボトルが入ったカゴを受け取ると、先輩はすぐさま「頼んだよ!」と去っていく。試合全ての記録と、選手の状態を把握している3年の先輩マネージャーさん。

・・・すごいなぁ・・・。

後ろ姿を見ていた状態のまま、ぼーっと立っていると、後ろから肩を叩かれた。



「なぁ」
「っ、はい!!」



驚きながら慌てて振り返ると、私より少しだけ背が高い男子生徒。
私は女子の中でも身長が低い方なので、きっとこの人も男子の中では身長が低いのだろう。
練習着からして、サッカー部の人らしいその人は、私と違って選手だ。



「な、なんでしょうか」
「いや・・・ぼーっとしてるから熱中症か何かかと思って」
「あっ、違います!ちょっと先輩に見惚れてただけで・・・」



言ってから、言わなくとも良い恥ずかしいことを言ってしまった気がして、慌てて顔を伏せた。



「へぇ、かっこいい人なんだ」
「はい!とても!」



クスクス笑いながら言われたことに、パッと顔を上げて答えれば、また声を上げて笑われた。
我ながら緩んだ顔をしていると思うけれど、本当に先輩はかっこいいんだから仕方ない。
ふぅん、なんて声を漏らしながら、水盤の方を見る。



「・・・あんな中、突っ込んでいけるかよ」
「・・・さっきよりすごいことになってますね」



テニス部にサッカー部まで加わって、てんやわんや。
私は照る日射しに負けて、また建物の陰に入る。同じようにその人も建物の陰に入ってきて、私の隣に並んだ。

その人は手にしていたスポーツドリンクを飲んで、ふとそのボトルを私に差し出してきた。



「飲む?」
「えっ!?あ、だっ!!・・・大丈夫、です・・・」
「あ・・・ごめん!!」



私の様子に気付いて、顔を真っ赤にして慌てて謝ってきた。



「サッカー部マネージャーいなくて、回し飲みとか普通だから・・・ごめん」
「あ・・・えと、恥ずかしいので気持ちだけいただきます。ありがとうございます!」



そう言って笑えば、相手も目を細めて笑ってくれた。
ただでさえ背が低い分幼く見えていたけれど、笑うとますます幼い印象を受ける。