佐原春馬は、なんでもできるやつだ。
「あっ、それ俺んちに全巻あるぜ?」
「マジで?!貸してくんね!!」
成績もそこそこ良くて、顔もなかなか良くて、人付き合いも良い。
「はっ、タダで貸すと思ってんのかよ?」
「ぐ・・・ジュース奢る!二本!!」
「ぶはっ!冗談だっつの!タダでいいぜー」
「佐原神んんん!!」
あと、なんだっけ。
あ、二年で唯一のテニス部のレギュラー。うちのテニス部強いらしい、ということは運動もできる。
たくさん努力もしているから、それ相応にできるようになったのだろう。
そして、それに加えて人柄も良ければ、女子からモテる。
確かに天才ではないし、美形というには違う。
「あの、佐原くん・・・今日のお昼、一緒に食べない?」
それでも、無意識に人の励みになったり、結果人を助けたり、周囲を明るく盛り上げたり・・・。
「・・・ごめんっ!今日せんせーに呼ばれてんだ!ごめんな!」
そういうところが、みんなに好かれている理由だろう。
ちなみに私は、普通の中でもとびきり平凡な普通だ。
勉強も運動も人付き合いも、生きる分に必要なだけあればいいという考えで、のんびりと生きている。
・・・・・・・・・てか今、可愛い子のお誘い断った?あぁぁ可愛い子だったのに、もったいない・・・!!
「七宮」
「あ?」
「え、なんでいきなり戦闘態勢?!」
落ち着けって!と笑いながら言うそいつは、私の机の隣にしゃがみ込んで、顔はへらへらしながらも両手を合わせた。
「・・・・・・いいよ」
「へへ、サンキュ!」
言いながらまた男子の輪に戻っていった。
久しぶりだな・・・あの合図。
「助けて」って合図。