「で、どうしたんだ?」
「勉強を少々、教えていただきたく……」
見ると、数学の教科書を抱えていた。
「あ……あぁいいよ。おいで」
でも、ちょうど良かった。
可愛い我が妹で癒されながら、映見に対するやましい気持ちをかき消そう。
そうとは知らない南琉は、テーブルに数学の教科書を開いて「ここなんですが……」と、指定してきた。
「これはなー……」と、式の説明をしながら、南琉をチラ見した。
南琉も、もう中学三年生かぁ……。
そんな南琉が、こんな風に控えめな声の上に、身内に対しても敬語なのは……
自分のコンプレックスであるアニメ声を、抑えるためだった。


