「……『崇』……」


「…………ん?何か言った?」


 先輩が、クレーンから目を離さずに問いかけてきた。

 はっとして、我に返った。


「えっ!?あっ……う、ううんっ!何にもっ!」

「そっか……気のせいか。ゲーセン賑やかだからな。よーし、もうちょい……」


 わっ……私……今、先輩の名前を言えた。

 ボソッとだったけど……先輩にはハッキリ聞こえなかったけど……これってもしかしたら……今日いけるんじゃない?

 真の彼女への、第一歩……。