そしてある日、Retはレコーディングスタジオにいた。


曲について、話している拓海と江真をよそに、廉は一人奥のソファーに座り、ある曲をずっと聞き込んでいた。


手にはペンを持ち、テーブルには白紙のノートが…。


そこに、デビューからずっとRetの音楽プロデューサーをしている三井が近寄って来た。


「どうだ?廉っ、進んだか?」


「あっ…いえ、すみません…まだ全然…」


三井は廉の真っ白なノートを見る。


廉はペンをテーブルに置き、ソファーに深く腰を掛けた。


「三井さん…やっぱり俺、この曲の作詞なんて…出来ないような気がします」


「どうして?こないだは書けそうって言ってたじゃないか?」


「なんか…想いが分からなくなったんです、中途半端な気持ちで作品にするのは……」


うつむく廉に、三井は小さくため息をついて廉の隣に座った。