を飲むことなので、話の種に聞いてしまったのだ。
「……なんで?」
 なぜか動揺し、嫌な間が空いてしまった。だが彼女は気にすることなくすっぱりと理由を教えてくれた。
「手軽だし、飲みたい時にすぐに熱いうちに飲めるから」
 こういった店で本格的に飲むのも好きだが、待つのは好きじゃない。
 そんな会話を思い出していると、彼女からメールが届いた。
『今日は、いりません』 なんとなく、分かっていた答え。
「すみません」
 その後に続く言葉を見ずに店員を呼ぶ。なんとなく、分かっているから。彼女にとって、俺はなんとなくの、暇つぶしの存在だったこと。本命の彼氏がいるということを、彼女の弟から聞いてしまっていたから。
「つまり俺は、インスタントコーヒーと同じだった訳だ」
「は?」
 いつの間にか来ていた店員。思わず零れてしまった独り言に、首を傾げていた。不思議な発言だったのだろう。それを打ち消すように俺はにっこり微笑(ワラ)って注文を言う。
「ブルーマウンテンをひとつ」
 今日はもう、飲むしかなかった。