「じゃあ今日は帰りましょうか」

「……もう少し……」


少しでも泳げる様になりたくて、そう言えば軽くタメ息を吐かれた。
呆れられたのかな。
そう思ったけど、先生は優しく微笑んだままだった。


「焦らなくたっていいんです。
ゆっくり、ゆっくり、一緒に進んでいきましょう」

「……はい」


これ以上、我儘を言う訳にもいかなくて私は頷いた。

泳ぎたい。
泳げない。

2つの気持ちが空回りして思う様に上手くいかない。

どうして泳げないのだろう。
せっかくスタートラインに立ったのに。

私はまたあの舞台に……。
それ以前に、泳げる様になるのだろうか。
不安を胸に残したまま、1日目の練習は幕を閉じた。