「お騒がせしてすみませんでした」


落ち着いた私は深く頭を下げた。


「いえ、僕こそすみません。
無神経にキミの事を……」

「先生は何も悪くないじゃないですか」


ニコリと笑顔を向ければ先生も少し口元を緩めてくれた。


「……何があったかはもう聞きません。
でも……話したくなったらいつでも僕の所に来てください」

「……ありがとうございます」


先生の優しさは嬉しい。
だけど、2度とあんな事を思い出したくない。
だからごめんなさい先生。


「高瀬さん」

「……はい」

「……もう……キミは泳がないのですか?」

「……」

「僕はキミの泳ぎが大好きです」


先生はニコリと笑うと私の目を真っ直ぐに見た。
その目は優しくて凄く力強かった。
でも私は。


「すみません」


今の私は先生の真っ直ぐな瞳に応える事は出来ない。