「皆さん注目してください」


水泳部の部員が練習をするプールに先生の優しい声が落とされた。
皆の視線が注目した所で先生は私の方を向く。

緊張からか物陰で立ち尽くしていれば、先生の柔らかい笑みが向けられた。
まるで、大丈夫、そう言っているかの様に。

決心した私は、ぎゅっと掌を強く握りしめ、1歩を踏み出した。


「高瀬!?」

「真希ちゃん!!」


私の姿が露わになった瞬間、皆の驚く声がプールを包み込む。


「お前……もしかして!!」


水着姿の私を見て悟ったのか、高岡くんは満面な笑みで私を見ていた。
それに応える様に、大きく頷く。


「高瀬!!」

「わ!?高岡くん!重いよ!!」


いきなり抱き着いて来た高岡くん。
自分の事の様に喜んでくれているのが分かり、私まで嬉しくなる。

彼の純粋な心が私の泳ぎたいという気持ちに火をつけてくれた。
本当に感謝しているよ、高岡くんには。

彼の背中に手を回し、高岡くんに負けないくらい強く抱きしめ返した。