夢が繋げた未来~何度倒れても諦めないで~

ゆっくりと水の中を歩くのを堪能した私。


「さて本番本番」


泳ごう。
ブランクもあるし中学の時よりは泳げなくなっているだろう。
でもそれは仕方がない。
と、しよう。

どうせ誰もいないんだ。
思いっきり楽しんで幕を閉じよう。
私の水泳人生に終止符を打つんだ。
自らの手で。

大きく頷いて壁際まで行く。
そしてそっと目を瞑った。


「……」


ドクンと鼓動が高鳴る。
いい緊張感が私を包む。


「いける……」


パッと目を見開き壁を思いきり蹴った。
泳げている。
久しぶりに感じるこの胸の高鳴り。
私は泳ぎを堪能していた。

でもそんな幸せの時間は一瞬で終わってしまう。


「あっ……」


15メートル近くになった瞬間。
足に違和感を感じた。
誰かに引っ張られている様な感触。
それを裏付けるかの様に頭にはあの時の事が浮かぶ。


『真希ちゃん』


男子部員の卑しい笑み。
水中でキスされた時の感触。


「っ……」


いや、やめて……。

心を落ち着かせようとしても全てが無駄だった。
体が動かない。
頭が真っ白になり水の中に沈んでいった。
私は死んでしまうのだろうか。

もう駄目だ。
息が苦しくて、体が動かなくて。
諦めて目を閉じようとした時。
遠くの方でバシャンと音が響いた気がした。

なんだろう、あの音。
でも、もうどうでもいいか。

重たくなった瞼は固く閉ざされていった。