「私……帰ります」

「高瀬さん!」

「高瀬!」


2人の声が私の耳へ届く。
でも振り向いたら駄目。
振り向いたら今度こそ言ってしまうから。

泳ぎたい、水泳部に入りたい。
私は水泳が大好きだって。

隠し続けてきた本音を。

でも、そんな事は言えない。
言ってはいけないの。
もう傷つきたくない。
色んな想いがグルグルと私を取り巻く。

ねぇ。
私はもう1度泳ぐ事が出来ますか?
あの舞台にまた立つことは許されますか?

その問いかけに答え何か返って来るわけない。
でもそれがやけに虚しく感じた。