「でも……」


泳ぎたいという気持ちは誰にも負けない自信がある。
でもそんな勇気はない。
もう1度水泳と向き合う事なんて許されないの。
顔を逸らそうとすれば先生は優しくそれを阻止した。


「顔に似合わずキミは頑固ですね」

「……え?」


先生はふぅと大袈裟にタメ息を吐いた。
そして直ぐにニコリと笑顔を浮かべる。


「……僕には夢がありました」

「え……?」


あまりにも突然でキョトンとしてしまう。
そんな私を見ながら先生はクスッと笑い話を続ける。


「“オリンピックで金メダルを取る”
……それが僕の夢でした」


夢を語る先生の顔は笑っていたけど凄く哀しそうだった。
前に見た先生の哀しそうな顔とリンクしていく。