「美味しい……」

「ふふっ。それは良かったです。
僕のお気に入りのクッキーです」


ニコリと笑う先生を見ると私の胸がギュウッと苦しくなる。
私は先生を見ていると嘘をつきたくなくなる。
嘘をついている自分が小さくて恥ずかしく感じる。
だから。


「先生……お話があります」

「……はい」


私は真っ直ぐに先生を見た。
私の態度で話の内容が分かった様に先生は紅茶を机に置くと私を真っ直ぐに見返してくれた。


「私……中学3年の時にレイプされそうになったんです」


このフワフワとした幸せな空間に似合わない言葉。
そんな言葉をサラッとしかも笑顔で言ったもんだからこの部屋の空気は一気に変わった。


「レイプ……?」


先生は受け入れられない様な顔をしながら驚いていた。
先生みたいな優しい人にレイプなんて無縁だな。
なんて思いながら私は昔の事を静かに話し出した。