「僕が高瀬さんとお話ししたかっただけです。
特に何かある訳ではありません」


優しく話す先生。
私と話したかったって。


「授業中なんですけど……」

「そうですね。
皆さんには内緒ですよ」

「は……はぁ」


“内緒”と言いながら人差し指を口の前に立てる先生。
その仕草は可愛いけど教師として大丈夫かな。
少し心配になりながら私は先生を見つめた。


「はい、クッキーです」

「……」


目の前に差し出されたクッキーは美味しそうだ。
でも授業中にクッキーって。
紅茶飲んでる時点でおかしいけど。
躊躇う私を見た先生はクッキーをつまむと私の口元へと持ってきた。


「せ……先生?」

「高瀬さん、あーんですよ」

「はい!?」

「甘い物は心を癒してくれますから。
今は何も考えずに食べて下さい」


先生の笑顔に誘われる様に私は口を開けた。