夢が繋げた未来~何度倒れても諦めないで~

「……なあ」

「ん?」


さっきまで満面な笑みを浮かべていたはずの彼の顔はいつの間にか真剣なモノへと変わっていた。
驚きながらも唇を引き締め彼を見つめる。
数秒の間の後、彼の両手が私の肩を掴んだ。


「先生の夢はもう叶ったよな?」

「え……?」

「教え子である高瀬と俺がオリンピックという舞台に立って2人揃って優勝した。
だから先生の夢は叶ったよな?」

「……うん、そうだね」


“教え子をオリンピック選手にする”
先生の新しい夢は確かに叶えた。

本当なら嬉しい事なのに。
隣に先生がいない事が哀しくて素直に喜べないけれど。
先生と私の夢は叶った。
そうだよね?先生。
心の中で先生に問う。
勿論、答え何て返ってこないけれど頭の中に先生の笑顔が浮かんだ。
まるで頷いてくれているかの様に。


「じゃあよ……」


高岡くんの声に現実へと引き戻された私は彼の顔を見つめる。
何かを言おうと迷っていて何度か口を動かすけれど声は出ない。
そして覚悟を決めたかの様に高岡くんは私の肩を掴む力を強くした。


「じゃあ、ソロソロ先生から卒業しろよ!!」

「えっ……」


高岡くんの叫びに私は目を丸くする。
卒業って……。
考えてもいなかった言葉に戸惑っていれば彼は私をそのまま引き寄せた。
彼の体にすっぽりと収まる私の体。


「た、高岡くん!?」


やっとの思いで絞り出した声。
高岡くんにも聞こえているはずなのに彼は何の反応も示さなかった。
ただ力強く私を抱きしめている。
いつも傍にいた高岡くん。
じゃれ合う事も、触れ合う事も今まで当たり前だったけれど。
こんな真剣な顔で抱きしめられるのは数回しかなくて。
変に緊張をしてしまう。