「わあー綺麗!!」


目の前いっぱいに広がるのは大きな海。
夕日が反射をしていてキラキラと輝いていた。
宝石箱をひっくり返したようなその景色にテンションが上がってしまう。


「ふふっ」

「あっ……」


隣で笑う先生に顔が熱くなる。
子供っぽかったかな。
そう思いながら繋がれていない方の手で頬を掻く。


「高瀬さん……今更ですが……。
お久しぶりです……お元気でしたか?」

「お久しぶりです。えっと……」


答えに迷ってしまう。
元気と言えば元気だけれど。
先生がいなくなってからは寂しかったし。
そう思っていれば先生はクビを横に振った。


「やっぱりいいです。
キミには元気でいて欲ししですけど、満面な笑みで肯定をされたら哀しいですから」


眉を下げながら口を尖らせる先生。
見慣れていた子犬顔に胸がトクンと高鳴った。

先生はあの時と全く変わっていない。
柔らかい笑顔も、優しい声も、フワフワとした雰囲気も。
先生は先生で少しホッとした。


「……寂しかったです」

「……そ、そうですか……」


安心からか本音が口から零れ落ちる。
先生は急に慌てだして私から顔を逸らした。
でもその横顔はほんのりと紅く染まっていて寂しかったのは私だけじゃないんだと胸が熱くなった。


「高瀬さん」

「はい」

「座りましょうか」

「はい」


先生に促される様にコンクリートの段差に座った。
肩と肩が触れ合いそうな距離に鼓動が徐々に速まっていく。
こんなに近くに先生がいる事が久しぶりで。
それ以前に、会う事さえも久しぶりだから緊張でおかしくなってしまう。