「お姉ちゃん!先生!ばいばーい!!」

「バイバイ!!」

「気を付けてくださいね」


帰る子供たちの背中を高瀬さんと僕で送る。
彼女は子供たちの背中が見えなくなりるまでずっと手を振っていて。
子供たちもまた、何度も振り向いて手を振っていた。


「帰っちゃいましたね」

「……そうですね」


僕が言えば彼女は寂しそうに笑った。
本当に楽しそうに遊んでいたから別れが哀しいんだろうな。
そう思っていれば高瀬さんは制服のスカートのすそをギュッと掴んで俯いてしまった。


「……先生……」

「……はい」

「……会いたかったです……」


僕は高瀬さんの言葉に目を見開いた。
てっきり子供たちとの事で元気がないと思っていたから。
でも、会いたいと思っていたのは僕だけではないと知って嬉しかった。


「僕もです。ずっとキミに会いたかった」


誰もいない校門。
夕焼けが僕たちを優しく照らしていた。


「……少し歩きましょうか」

「……はい」


高瀬さんが頷いた事を確認して、彼女の手をギュッと掴み歩き出した。

チラリと横を見れば高瀬さんも僕を見ていて同時に目を逸らした。
でも手は繋いだままで僕の心は温かくなる。

少し伸びた背も、髪も、大人びた顔つきも。
全部が僕たちの離れていた時間を表していた。

でも、子供たちに見せていた笑顔も、あどけない表情も。
僕と一緒にいた頃の高瀬さんと何1つ変わらなかった。

それにホッとした僕はそっと繋いだ手に力を入れた。


「……」


高瀬さんは黙ったままだったけれど。
僕と同じ様に手を握る力を強くした。