夢が繋げた未来~何度倒れても諦めないで~

皆と泳いで騒いで、気が付けば外は真っ暗で。
解散したのは21時を過ぎた頃だった。
着替え終わって皆と一緒に学校を出ようとしたけれど原田選手がそれを阻止したんだ。
『送っていく』そう言って車に無理やり乗せられたけれど、特に話そうとはしない彼。
沈黙の車内に少しだけ気まずさを感じつつも心は幸せ気分でいっぱいだった。

あんなにハシャイだのは久しぶりだったな。
皆と一緒にいる事も、笑う事も。
泳ぐ事が楽しいと思えた事も……。
先生がいなくなってから初めてで。
皆には感謝をしてもし足りない。
明日からはまた厳しい練習になるかもしれないけれど。
でも、三井先生も高岡くんも先輩たちも。
私の周りには沢山の仲間がいる。
だから大丈夫だ。
もう私は道を間違えたりはしない。
ぎゅっと唇を噛みしめて前を向いた。


「真希」

「は、はい!」


沈黙がいきなり破られたせいで大袈裟なくらいに肩を揺らしてしまった。
原田選手に名前で呼ばれるのはまだ慣れていないけれど。
正直、嬉しかった。


『これからは親友の生徒ではなくて、俺の生徒として接するよ。
あと数年で君は俺の生徒になるからね』


その言葉通り原田選手が私に接する時の態度は少し変わった。
喋り方もフランクになって少し厳しい事も言われるけれど。
それが心地良かった。
漸く認められた気がして。
今までも原田選手は素を出してくれていただろうけど、仲間内に見せるような笑顔も見せてくれるようになった気がするんだ。


「今日の泳ぎは中々だった。
選抜の阿保みたいな泳ぎはもう2度とするなよ」

「阿保みたいなって……」

「返事は?」

「……はい……」


不貞腐れながらも頷けば原田選手は笑ってくれる。
運転中だからこっちを向く事はないけれどその横顔は優しくてふいに先生を思い出してしまった。
先生にもこうやって送って貰ってたな。
思い出せば出すほど胸が締め付けられるけれど哀しくはなくなっていた。
勿論寂しいけど先生はいつだって私の心の中にいるって思い知ったから。


「蒼井の為にも君は笑っていてくれ」

「……はい、原田選手も」

「ははっ……そうだな!」


一瞬だけ驚いた様に目が開かれたけどすぐにいつもの笑顔へと戻った。