夢が繋げた未来~何度倒れても諦めないで~

「先生……?」


やっとの想いで言えた言葉。
動揺する私に三井先生は軽く頷くと、どこか遠くを見つめる様に視線を向けた。
何かを思い出す様に細められた目は彼の優しさが滲み出ているかの様だった。


「あの夏大会の時、お前と再会したよな」

「……はい」


平泳ぎで大会に出たあの日、私と三井先生は再び出会った。
最初は恐怖でおかしくなりそうなくらいに胸が締め付けられて。
また同じ事を繰り返すんだって絶望に陥りそうになったけれど。
先生が私たちの間に入ってくれた。
先生が傍にいてくれるだけで、強くなれて、三井先生と向き合う事が出来た。

先生のお蔭で私たちは仲直りしたと言ってもいいと思う。
だけど、それだけで三井先生が先生の為に何かをする必要があるのだろうか?
疑問に思いながら三井先生を見つめれば彼の視線はゆっくりと私に向いた。


「あの後、蒼井先生は俺を追いかけてきたんだ」

「え……」


確かにあの後、先生は用事が出来たと言って、少しだけ席を外していた。
だけど、まさか三井先生の所に行っていたなんて。
驚きが隠せず目を丸めれば小さく笑われる。


「やっぱり知らなかったか」

「……はい、先生は何も言っていませんでした」

「そういう人だもんな、あの人は」


そう言って笑うと三井先生は深くタメ息を吐いた。


「蒼井先生に言われたんだ。
彼女の心をこれ以上壊さないでくれって」

「……」


何も言えなかった。
胸の奥がジワジワと熱くなって、声を出そうとしても上手く言葉が出ない。
パクパクと動く口は虚しく開いたり閉じたりするだけだ。


「どんなにお前が苦しんできたのか、傷ついてきたのか。
また水泳を始めるのにどれだけの勇気と覚悟がいったのか……。
蒼井先生は自分の事の様に辛そうな顔をして教えてくれたんだ」

「そう……だったんです……か」


絞り出した声は震えていて自分でも笑ってしまうくらいの情けない声。
だけど、そんな事を考える余裕なんてなくて熱くなった瞳から涙が零れ落ちない様に、それだけしか頭になかった。