「あっちゃー……今日部活が休みなのを忘れてたよー……」


部活の時間になり着替えてプールに行けば静かな空間が私を包んでいた。
すっかりと忘れていたが私には関係ないか。
部活があろうがなかろうが、練習をする事に変わりはない。


「さーて……泳ぎますか……」


準備運動をしながらプールを見つめる。
弾まない心にももう慣れていて、事務的にただ泳ぐだけになっていた。


「……よーいドン」


感情の籠っていない掛け声と共にプールへと飛び込んだ。
体に染み込んだ泳ぎ、自由形。
意識をしなくても勝手に体が動く。
それくらい泳ぎ込んできた。
スピードはこれでもかってくらいに出ているけれど心はあり得ないくらい冷めていた。


「……おわりー」


泳ぎ切ってプールサイドへ上がろうとすれば誰かに軽く突き飛ばされた。


「きゃっ!?」


誰もいないと思っていた場所で起こった事に驚きを隠せずそのままプールへと落下していく。
バシャンと水飛沫を飛ばしながら水中の中へと落ちた。


「な、なに!?」


ゴホゴホと咳き込みながら顔を上げればそこには想像もしていなかった人が立っていた。


「よう」


軽く右手を上げながら白い歯を見せびらかすのは私がよく知っている人だ。


「三井先生!?」

「悪い、驚かせたか?」

「お、驚きますよ普通……」


短めな黒い髪は彼に似合っていて爽やかで。
何故か水着で、上半身裸のその上にパーカを羽織っていた。
中学の時、コーチをしていた時のような格好で、私を見下ろしている。


「えっと……何をしているんですか?」

「何って、部活?」

「えっと部活は休みですけど……ってか部活ってスパイにでも来たんですか?」


妙に噛み合わない会話。
三井先生はしれっとココにいるが、他校の先生が簡単に侵入してきていいのだろうか。
しかも悪気もなさそうだ。