「やめろって!お前が苦しんでる姿なんて誰も見たくねぇよ!!
蒼井先生だって同じ気持ちだろ!?」

「分かってるよそんな事!!」


平井くんの言葉に思わず怒鳴ってしまいハッとした様に謝った。
彼は気にしていないみたいだったけれど私の心はズタズタで。
心底自分に嫌気がさした。

皆は私の事を心配してくれているだけなのに。
どうしてそれを素直に受け取れられないの?
自分がこんなにも幼稚な人間だって知らなかった。
苦笑いを浮かべて皆を見渡す。


「みんな、ごめん私……」


水泳が好き。
そうは言えないけれど。

泳ぐ事は諦めたくないんだ。
苦しくて辛くて、どうにかなりそうだけど。

私はやっぱり。


「私には泳ぐ事しか出来ないから。
他にやりたい事なんて見つからないし。
どんなに苦しくたって、泳いでいたいんだ」


矛盾しているって自分でも呆れちゃうけど。
それでも、辞めたくはない。

自分から泳がないって選択肢を出したくはない。
だって私は泳げるんだもん。

泳ぎたくても泳げない訳じゃない。
そんな私が泳がいなんてあり得ない。


「高瀬……」

「……ごめん、私もう行くね」


皆の視線が怖くて、顔を見ることなく逃げ出した。