夢が繋げた未来~何度倒れても諦めないで~

「……酷い顔だな」

「……うるさい……」


プッと同時に吹きだして顔を見合わせて笑い出した。
久しぶりに笑った気がした。
こうして本音で話したのも誰かと真っ直ぐに向きあったのも久しぶりだ。
泣き過ぎて顔は酷いはずなのにそんな事はどうでも良くて。
ただこうして笑っていたかった。


「高瀬」

「……ん?」


彼の肩に寄り掛かりながら声だけを高岡くんに向けた。
ピタリと寄り添った体。
私服の高岡くんは濡れる事もお構いなしに私を抱きしめてくれている。
彼の優しさに浸っていれば掌が私の髪を撫で下ろした。
その行動に驚きつつも身を任せる様に目を閉じる。
でも聞き慣れた言葉が私の耳に届くとピクリと体が揺れた。


「もう泳がなくていい」

「……高岡くん」


その言葉は沢山の人から聞いてきた。
両親も、先輩たちも、原田選手も。
高岡くんからだって何度も聞いた。
それを聞く度にいつもなら反抗をして1人でムキになっていた。
だけど今は泳ぎたくないって気持ちが大きくて。
素直になった分真っ直ぐにその言葉を受け入れられる。


「無理すんなよ、辛いなら辞めればいい。
俺がずっと傍にいるから」


抱きしめられる力が強くなって。
止まったはずの涙が頬へと伝った。


「俺はいつだって高瀬の傍にいる。
こうしてお前の涙だって拭ってやれる。
だから……もう……やめろよ……」


高岡くんの指が私の頬に優しく触れた。
誰かに触れられる事がこんなにも安心するって忘れていた。
すぐ傍に大切な人がいる事は凄く心強くて嬉しい事だ。
高岡くんを好きになれば私は幸せになれるのかな。


「高瀬……俺にしとけ。
お前はもう……幸せになっていいんだ。
誰よりもお前を幸せに出来る自信がある。
だから……」


ずっと、ずっと。
私はこの優しさに守られてきた。
高岡くんが傍にいてくれたから私は強くなれた。