夢が繋げた未来~何度倒れても諦めないで~

「誰が何と言おうと私は先生との夢を叶えます。
……失礼します」

「今の君がオリンピックで金メダルを取ったとしても……。
蒼井は素直には喜べないと思う」


歩き出そうとした私の手をパシリと掴むと原田選手は力強く握りしめてきた。
体型も性別も何もかも違う私たち。
振り払おうとしても敵わなくて逃げ出す事も出来ずに原田選手の言葉を聞く事しか出来ない。


「君の泳ぎが何よりも好きだった蒼井が。
今の真希ちゃんの苦しそうな泳ぎを見て耐えられると思うか?
アイツは間違いなく自分を責めるだろう。
自分のせいで真希ちゃんから水泳への想いを奪ったって!
自分が大好きな人の大切なモノを奪って平然としていられるほどアイツは大人じゃない!!
頼むから……もう蒼井を苦しめないでくれ……」


原田選手の声が震えていくのが分かる。
大切な人を守ろうと必死なんだ。
そう思うと無下に出来なくて。
手を振り払う事はもう頭から消えていた。


「自分を苦しめてまで泳ぎ続けないでいいんだ。
そんな事……蒼井は望んでいない……だから……」


原田選手の気持ちは分かる。
でも私が泳ぐ事を辞めたからって何も解決がしない。

校長先生との約束がある限り少なくとも卒業までは泳ぎ続けなければいけないんだ。
だったら先生との夢を叶えたい。
そう思う事も許されないの?
疲れ切った様に笑みを浮かべて原田選手の方へと振り向いた。


「じゃあ他に方法がありますか?
先生がこれ以上、傷つかないためにも私は泳ぎ続けるんです。
あの人はもう苦しむべき人じゃない、幸せになって欲しいから。
それが叶うなら私は喜んで苦しむ道を選びます」

「……俺は蒼井の親友としても指導者としても!
真希ちゃんが壊れていく所を見ていたくないんだ!!」

「あっ……」


原田選手の声が、言葉が。
私のなけなしの心に響いた。
揺れ動く心にとどめを刺す様に原田選手は同じ優しい顔で目を細めた。


「俺も君の楽しそうな泳ぎが好きだから」

「っ……」

「真希ちゃん!!」


何も考えたくなくて一瞬の隙を見て逃げ出した。
これ以上、原田選手と居たら私は可笑しくなってしまう。
泳ぎ続けようと腹をくくったのに、いとも簡単に崩れ去ろうとした決意に苦笑いしか出なかった。