夢が繋げた未来~何度倒れても諦めないで~

「……」


その顔を見るのが嫌で直ぐに視線を戻す。
どんな事を言われたって何とも思わないけれど。
哀しそうなあの顔は、私の胸を締め付けるんだ。
心配を掛ける事しか出来ない無力の自分を思い知らされるから。


「真希ちゃん……」


小さく呟かれた名前。
原田選手のその声は顔と同様に哀しそうなモノだった。
本当は聞こえているけれど、聞こえないフリをして飛び込み台へと向かう。
もう、私の事は放って置いて。
私の事で哀しまないで。
そう思うのは私の我儘だって分かっているけれどそう願わずにはいられなかった。
これ以上、自分の無力さを感じたくない。


「……誰かを傷付けるのはもうごめんだ」


小さな声と共にプールへと飛び込んだ。
泳いでいる時だけが私を無心にしてくれる。
だけど、前とは違うんだ。
前までは泳いでいると楽しくて仕方がなかった。

足を動かせば気持ちのいい音がして水飛沫が飛び散って。
手を動かせば水泳への想いが溢れ出てきて。

やっている事は全て同じはずなのに。
心が悲鳴を上げる様に苦しくなる。

前へ進めば進むほど。
私の心は冷たくなって。

スピードが速くなればなるほど。
水泳への想いが黒く染まっていく。

私は、なんの為に泳いでいるのだろう。
そう考えれば真っ先に校長先生の顔が頭にチラついた。

私が水泳を辞めれば先生はもっと苦しむ事になる。
そう思うと学校を辞めるどころか部活さえも辞められない。

でも、それだけではない。
私は自分自身の為に泳いでいる。

泳ぐ事だけが、先生との唯一の繋がりだから。

私が泳ぎ続けていれば。
いつか夢を叶えることが出来れば。

もう1度、先生に会う事が出来るかもしれない。
今は居場所すら分からないけれど、また私たちの道は1つへと繋がるかもしれない。

そんな僅かな希望だけが今の私を支えているんだ。