夢が繋げた未来~何度倒れても諦めないで~

数時間かけて着いたのは海が近くにある合宿所だった。
ココは大きなプールが何個もある有名な場所だ。

だだっ広い体育館みたいな所に案内をされて待たされる。
綺麗に並べられた椅子。
泳法によって分けられていて席順も決められている。
椅子の後ろに張られた紙に名前が書かれており、私と赤星くんは隣同士だった。
少し離れた所には高岡くんと平井くんが隣同士で座っていた。

時間が経つにつれて多くなる人。
日本全国から集まった総勢、376人の有力な選手たち。

普通なら緊張や、不安、興奮。
そういった感情があるかもしれない。
だけど私の心はどこか冷めていて緊張をするどころか退屈に感じていた。
こんな事をしている暇があるのなら練習をしたい。
1秒でも速くタイムを伸ばせるように。
黙り込む私に赤星くんは視線だけを向けていた。


「……」


無視をしようとしたけれどあまりにも強い視線に口を開いてしまう。


「……なに?」

「アンタさ……」

「皆さん!静かにしてください!!」


赤星くんが何かを言おうとした時、マイクを持った人が舞台の上に立っていた。
彼は喋るのを諦め私から目を逸らす。
私も彼から目を離して前を向いた。


「これから2週間、君たちと過ごす事になるのでまずは指導者の自己紹介からしようか」


そう言って12人の男女が舞台へと出てきた。
その瞬間、盛り上がる選手たち。
どうやら有名な人らしい。
その中に見覚えのある顔があるのに気が付いた。


「原田選手……」


小さく呟けば聞こえる訳もないのに原田選手の頬が緩んだ。
その視線は真っ直ぐに私を捕らえている。
こんなにも沢山の人がいる中で彼の目には私しか映ってはいない様だった。
汚れのない真っ直ぐなその目。
耐えきれなくなって自分から視線をそらしてしまう。


「……」


あの目は苦手だ。
だって先生の目とそっくりなんだもん。
久しぶりに身近に感じた先生の面影に胸がズキリと痛む。
言葉には出せない苦しさがゆっくりと私を締め付けていた。