「な……何でプール……?」


連れてこられたのは室内のプールだった。
ドクンと胸が高鳴る。
プールを見るだけで私の“泳ぎたい”という気持ちが大きく膨れ上がっていく。


「……お前のその顔が見たかったから」

「え……」


その顔って。
私は今どんな顔をしているの?
その疑問を解消する様に高岡くんは小さく笑った。


「泳ぎたくて堪らねぇって顔」

「そ……そんな事……」


“ない”とは言えなかった。
図星すぎて何も喋れない。


「お前さ……
本当は水泳部に入りたいんじゃねぇの?」

「そんな訳ない……」


部活なんて2度と入らない。
そう決めたから。
もう2度とあんな目に合いたくない。


「お前が何を抱えてるのかとか何も知らねぇけどよ……」


照れた顔の高岡くんはいきなり私の体を引き寄せた。


「た……たか……」


何で抱きしめられて……。
頭がパニックになる。
そんな私をよそに彼のハッキリとた声が私に向けられた。


「素直になれよ」


高岡くんの声が胸へと響き渡る。


「素直に……」

「ああ」


私は水泳が好き。
出来る事なら毎日でも泳いでいたい。
泳ぐことが私の全てだから。


「私……」


口から出ようとした私の本音。
でもそれを邪魔する様に昔の記憶がフラッシュバックする。