夢が繋げた未来~何度倒れても諦めないで~

「先生は……」


皆に真実を言おうとした時、ワザとらしい咳払いが響き渡った。
チラリと目を向ければ伊藤先生がゆっくりと首を横に振っている。
それで理解をしたんだ。
伊藤先生は先生が辞めた本当の理由を知っているって。
知っていて、水泳部の顧問を引き受けたんだって。


「……」


別に伊藤先生が悪いんじゃない。
それは分かっているけれど、やっぱり納得は出来ない。
先生以外が顧問をするなんて。
そんなの……。


「っ……」

「高瀬!!」


私は我慢する事が出来ずに走り出した。
後ろから高岡くんの叫び声が聞こえてくるけど、振り返ることなくプールを出る。

私には真実を話す権利すらないのか。
それなのに、ココで泳ぎ続けろというの?
皆から先生を奪っておいて、それを隠したまま居続けろっていうの?
そんなの残酷すぎる。
いっそ全てを伝えて嫌われた方がマシだ。


「……先生……」


いつも、傍にいてくれた先生。
哀しい時には一生懸命に励ましてくれたし、落ち込んでる時には一緒に悩んでくれた。

優しくて、温かくて。
見ているだけで元気になれる笑顔を私に向けてくれた。

どうして、こうなってしまったのだろう。
先生がいないプールなんて、先生がいない部活なんて。
私にはもう考えられないというのに。


「先生」


考える間もなく走り出した。
校舎に向かって。
まだいるかもしれない。
あれからかなり時間は経っているけれど、もしかしたら。
僅かな希望だけれどジッとはしていられなくて。
無我夢中で走りだした。