夢が繋げた未来~何度倒れても諦めないで~

誰もいないプールで私たちは2人で座り込んでいた。
膝を抱えながら、上でもなく、下でもなく。
ただ遠くを見つめる私の横で高岡くんは黙ったまま同じように座っている。
慰める訳でもなく、怒る訳でもなく。
ただ一緒にいてくれる。
それが私の唯一の支えだった。
高岡くんのお蔭で怒りしかなかった私の頭も、心も、少しずつ冷静さを取り戻していく。


「……私さ……先生にどうやって謝ればいいのかな……」


ポツリと呟いたその言葉。
高岡くんの顔を見ている訳じゃないからどんな表情をしているかは分からない。
だけど哀しそうに眉を下げているんだろうなって、何となく思った。


「何でお前が謝るんだよ。
……お前は悪くないだろーが」


いつもの元気がいっぱいの彼の声じゃない、静かな声が私に向けられる。
だけど私はそれを素直に受け入れられない。
だって。


「私のせいだよ。
あの人たちは私を傷付けたかっただけなの。
なのに……先生は巻き込まれた……」


先生に必要上に近付かなければ、写真を撮られない様に気を付けていれば。
あの時、音が聞こえて時にもっと真剣に考えていれば。
全部防げていたかもしれない。


「違うだろう!?
全部アイツらが悪いんだろ!?」

「そうじゃない……。
私がこうなる前に手を打つべきだったの」


大丈夫だろうと、高をくくって何もしなかった。
嫌な予感は感じていたのにそれから目を逸らしていた。


「お前は何でそうやって……」


後悔をしていれば高岡くんの震えた声が私に向けられる。
勢いよく立ち上がったのを目で追えば彼は私を見下ろして哀しそうに呟いた。


「全部1人で抱え込もうとするんだよ……。
……先生はお前が悪いなんて思っていない!!
お前がそんな顔をして先生が喜ぶとでも思ってんのかよ!!」


高岡くんの声は私の耳には届いている。
きちんと聞こえているのに何でだろう。
その言葉は私の心までは届かなかった。

頭では分かっているんだ。
先生は私の事を怒ってもいないし恨んでもいない。
私がするべき事は先生に感謝をしてまともな高校生活を送って幸せになる事。
だけど。


「私1人が助かったって意味がない……」


先生が居なきゃ意味がないの。
乾いたはずの頬が再び濡れていく。


「お願い……1人にして……お願いだから……」


絞り出す様な声で高岡くんに言う。
これ以上こんなに情けない姿を見せたくない。
何より今は1人になりたい。
誰とも話したくない。


「……分かった……」


私が譲らない事を知っている高岡くんは小さく頷いた。
こういう所が彼の優しい所だ。


「っ……」


去っていく高岡くんの背中を見ながら小さく悲鳴を上げた。