「その噂はデタラメです。
僕たちは交際はしていません」


私はオロオロとするだけだったのに。
先生は落ち着いていて、真っ直ぐに校長先生たちと向き合っていた。
その背中は頼もしくてさっきとは違う意味で胸が高鳴った。


「だったらこれは何だ!!」


バンと激しい音が鳴り響く。
先生の体の陰で見えなかったが恐る恐る覗き込めば数枚の写真が机に置いてあった。


「な、なに……この写真……」


震える声が校長室へと消えていく。
その写真には私と先生が映っていた。
先生と話している時の写真。
先生が私の頭を撫でている時の写真。
先生と私が抱きしめ合っている時の写真。

最後の写真には覚えがあった。
私が選抜に選ばれた事を先生が階段の踊り場で教えてくれた時のものだ。
嬉しさのあまり抱き合ったがその時に小さくカシャリと音がしたのを覚えている。
まさか誰かに写真を取られていたなんて。
しかも角度が角度なだけにキスをしているようにも見える。
校長先生たちもこの写真がネックだったようで指を差しながら怒鳴り声を上げた。


「完全にキスをしているだろう!!」

「白状したまえ!!」


怒り狂った校長先生たちを前に私は大袈裟なまでに首を横に振った。


「してません!!
これは選抜の事を聞いた時に嬉しくて先生に抱き着いただけです!!」

「嘘を吐くな!!」

「嘘じゃないです!!」


何度説明をしても分かっては貰えない。
興奮状態の人間に何を言っても無駄だとは分かってはいるが誤解を解かないと厄介な事になる。
そう思い否定を続けようとした時、先生はポツリと言葉を放った。


「……この写真は一体誰が?」

「我が校の生徒だ。それ以上は言えない」


生徒と聞いた瞬間にあの3人が目に浮かんだ。
高岡くんのファンの女の子たち。
でもまさかココまでする訳ないよね?
何の証拠もないのに疑うのは駄目だ。
そう思うがそれ以外には全く見当もつかない。