「おっ!来たぞ!」

「高岡くんと高瀬さんよ!!」


校舎へと向かう途中に私たちは沢山の人に囲まれていた。
でも記者さんたちではなく生徒たちだ。
男女関係なく騒ぐ理由はあの垂れ幕のせいだろう。
校舎に掲げられている垂れ幕に目を向けるが直ぐに生徒の頭で見えなくなった。


「高岡さん凄いね!
女の子なのに選抜候補なんて!」

「そんな事は……」

「応援してるから頑張ってね!」


否定の言葉を言う暇もなく騒ぎ出す皆。
隣で高岡くんも同じ様な目に合っている。
身動き1つ取れなくてなんとか逃げ道を探そうと遠くに視線を向ければ見た事がある3人組が目に映った。
騒いでいる皆とは対称的に私を鋭い目つきで睨んでいる。

あれは高岡くんのファンだ。
皆は興奮して気が付いていないみたいだけど凄い視線だ。
関わると碌な事がない。
そう思い目を逸らした。
でも再び視線を戻した。
だって逸らす時、一瞬だけ怪しく笑う3人が目に映ったから。


「……」

「……」

「……」


私が見た時には既に背中を向けて歩いている所だった。
気のせいかもしれない。
だけどやっぱり胸の中に嫌なモヤモヤが広がっていく。


「高瀬さん?」

「大丈夫?」


よっぽど怖い顔をしていたのか皆は心配そうに私を見ていた。
慌てて首を横に振って笑顔を作る。


「何でもないです!
頑張りますので応援よろしくお願いします!」


敬礼をしながらおどけて見せれば皆も騒ぎ出す。
嫌な予感を振り払う様に私も一緒に騒いだ。
少しでもこの不安から逃れたくて。