翌日の日曜日。

部活は休みだったが私は学校のプールへと来ていた。
勿論、水着を着て。

先生に呼ばれたんだけど。
そう思い周りを見渡すが誰もいなかった。


「一体どうなって……」

「高瀬!?」

「高岡くん!?」


声が聞こえ振り返れば驚いた顔の高岡くんがいた。


「お前も先生に呼ばれたのか?」

「うん、高岡くんも?」

「ああ」


ますます呼ばれた理由が分からずに首を傾げる。
用事があるなら部活の時に言えばいいのに?
不思議に思っていれば聞き慣れた優しい声が聞こえてきた。


「2人ともお待たせしました」

「先生!」


先生の声に振り返ればその後ろにもう1人立っているのが分かる。


「原田選手!」


驚きながら呼べば原田選手は軽く右手を上げた。
だけど高岡くんは気まずそうに顔を逸らした。
恐らく原田選手の思惑を知らずに啖呵を切った事を気にしているのだろう。
原田選手は原田選手で少し困った様な顔をしていた。
賭けとはいえ、私たちを煽った事を気にしているのかもしれない。
お互いに顔を合わそうとしない2人を見兼ねて私は声を上げた。


「原田選手」

「お、おう。どうした?」

「ありがとうございました!」

「え?」


勢いよく頭を下げれば驚いた声が降りかかる。
だけど私はそのままお礼を言い続けた。


「原田選手が私たちの足りないモノを教えてくれたお蔭で2人揃って優勝することが出来ました!
水泳と真剣に向き合って成長することが出来たのも原田選手がいてくれたからです。
本当にありがとうございました」


原田選手との勝負がなかったら。
私と高岡くんは優勝する事が出来なかったかもしれない。
だから、原田選手にも感謝しかしていない。


「……俺も高瀬と同じ気持ちっす。
あの時は何も知らずにあんな態度をとってすみませんでした!!」


私と同じ様に頭を下げる高岡くんを横目に見ながらクスリと笑みを浮かべる。
少し大人になったね。
親心の様な気分に浸っていれば原田選手は深くタメ息を吐いた。