「アンタと一緒に泳いで、闘って。
凄く楽しかった……中々追いつけなくて、やっと抜かしたと思ったらすぐに抜かれて」


銀メダルの淵を添う様に指を這わす赤星くんを見つめていれば急に視線が私に向いた。


「こんなに凄い選手がいるんだって思ったら胸が高鳴ったよ。
この銀メダルは本当は悔しがった方がいいんだと思うけど。
だけど俺にとっては金メダル以上の価値がある。
だってアンタという最高のライバルに出逢って、水泳の楽しさを思い出したっていう証だから」


そう言って笑った赤星くんはキラキラと輝いていて。
きっと、もっとすごい選手になるんだろうなって簡単に想像がついた。
だけど、そんな彼に私はワクワクしていた。
強いライバルがいるって、それだけで頑張れる理由になるから。


「今度は負けないから」

「私だって」


2人で笑い合って固く握手を交わす。
手を離してお互いに頷いていれば気まずそうな声が聞こえてきた。


「あー……っとこの前は悪かったな。
チビなんて言って……」


平井くんは頬を掻きながら私と高岡くんに謝った。
確か前の大会でそんな事を言われた気もする。
私と高岡くんは視線を交じり合わせるとお互いに頷いた。


「別に気にしてないよ!ね?」

「ああ、チビに負けたお前らの方が気の毒だしな」

「そうそう!」


ワザとらしく笑う私と高岡くんに平井くんも赤星くんもフッと頬を緩めた。


「ったく、うるせぇよ!今度は負けねぇって!!」

「さあ、平井は負けるんじゃない?」

「何だと赤星!!」


いきなり言い争いを始める平井くんと赤星くん。
それを見た私と高岡くんは思わず吹き出してしまった。

そして4人で笑い合った。
きっと私たちは、この先もずっとライバルとしてお互いを意識していくことになるだろう。
でもそれはいい意味でだ。
そんな私たちを先生と三井先生が笑いながら見ていた。