着替え終わって1人で会場を出る。
振り向けばさっきまで私が闘っていた場所がそこにはあった。
もうすっかりと静かになっていた会場。
そこに向かって私は深く頭を下げた。


「ありがとうございました!!」


感謝の言葉を向けて頭を上げた。
募る想いは沢山あるけれど、ここがゴールな訳ではない。
寧ろスタートだ。
そう思い私は笑顔を浮かべる。
早くいかないと、皆が待っている。


「高瀬」


待ち合わせ場所である駐車場に向かおうとすれば後ろから声を掛けられた。
振り向いた先には三井先生がいた。


「少し……いいか」


彼の真剣な眼差しに考える前に頷いていた。

三井先生に連れてこられたのは会場から少し離れたベンチだった。
そこに並んで座る。
ここは夏大会の時に三井先生と再会した場所でもある。
だけど私は特に何も思わなかった。
冷静にいられる自分が少し成長をした自分が嬉しかった。


「なあ、高瀬」

「は、はい!」


1人で笑みを浮かべていれば三井先生の真剣な声が落とされた。
私は慌てて顔を引き締めながら三井先生の方を向く。
三井先生は私を見る事なくどこか遠くを見つめていた。


「お前は強いな」

「え……」


いきなり向けられた言葉に私は首を傾げた。
その意味もそこに籠められている想いも。
私には分からない。
だけど三井先生にとっては大きな問題だって事は分かった。