「高瀬!!」

「高岡くん!!」


先生と抱きしめ合っていれば高岡くんの声が響き渡った。
振り返ろうとしたが先生にギュッと抱きしめられてしまう。


「……先生……?」


不思議に思い先生の腕の中で顔を上げれば、哀しそうな顔をする先生が目に映った。
でも直ぐにいつもの優しい笑顔を浮かべて私から離れていく。


「……すみません。
ほら、皆さんが待っていますよ」


先生の視線の先には高岡くんや先輩たちがいる。


「……はい!」


先生の事は気になったが私は皆の元へと駆け寄った。


「真希ちゃん!流石だったよ!!」

「鳥肌が立つくらい格好良かった!」

「めっちゃ速かったし!!」


興奮気味に私の頭や体を軽く叩く先輩たち。
揉みくちゃにされながらも笑顔が絶えなかった。
こうやって水泳が好きな仲間と一緒に大会に出られる。
それは本当に幸せな事なんだ。
心が温かくなりながらも皆とじゃれ合っていた。


「ったく、途中は冷や冷やさせられたけどな」


深くタメ息を吐かれ、そっちを見れば高岡くんがいる。
でも顔は満面な笑みを浮かべていた。


「冷や冷やさせたのは高岡くんも一緒じゃん!」

「そうだそうだ!!
高岡も真希ちゃんの事言えないぞ!!」


私の言葉に反応をする様に先輩たちは今度は高岡くんを揉みくちゃにしていた。
それを笑って見ていれば私もその輪の中に入れられる。


「本当に2人は似た者同士だよ!!」

「心配を掛けやがって!」


先輩たちはそう言いながらも笑顔だった。
私や高岡くんの事をずっと見守ってくれていた先輩たち。
仲間でありライバルでもあるのにずっと応援をし続けてくれていた。
その恩を私は、私たちは少しでも返せただろうか。
胸に募る想いを心に私は笑った。
心の底からの笑顔を。