夢が繋げた未来~何度倒れても諦めないで~

もう駄目なのかな。
体力も尽きているのに、ここからが本番といってもいい彼に立ち向かうのは無謀だ。
勝てる見込みなんて全くない。

それなのに、負けたくないという想いだけは消えていかない。
どう足掻いたって無駄なのに。

頭に余計な事が浮かび始める。
それは全部、ネガティブな事ばかり。
完全に集中力が切れた。

もう諦めてしまえばいいのに。
その方が楽なのに。
何で私は全力で泳ぎ続けているのだろう。
ふと頭に浮かぶのは先生の言葉だった。


『僕はキミの泳ぎが大好きです』


私の泳ぎを好きだと言ってくれた先生。
泳げなくなった私に夢を与えてくれた。
泳げる事が奇跡だと教えてくれた。

そうだ。
私は先生に出逢って。
もっともっと水泳が好きになったんだ。

中学時代の私が、もし赤星くんと闘っていたら、あまりの速さに絶望をするかもしれない。
負けた事がなかったあの時の私には乗り越えられなかっただろう。
だけど、負ける事の悔しさを知って私は変わったんだ。
もう2度と、誰にも負けたくない。
悔しい想いも、苦しい想いも。
沢山してきたけど。


『でも、そんなキミにしか出来ない泳ぎがある。
今までの悔しさを、苦しさを、全て泳ぎに変えて。
余計な事を考えずに楽しく泳いで来て下さい』


先生がくれた言葉に導かれる様に私の頭は空っぽになっていく。
何も考えなくてもいいじゃない。
ただ楽しく泳げば、それでいいんだ。

そう思った瞬間に、不思議とまた体が軽くなる。
苦しかったはずの息も落ち着いてくる。

泳ぐ事が楽しくて。
何よりも大切なんだって。
私の全てを泳ぎに籠めて最後の1秒まで楽しんでいこう。

そう思ってからは前に進む度にどんどん体が軽くなっていく。
さっきまでは負けたくないって思ってた。
もうあんな屈辱は味わいたくないって。

だけど今は違う。
勝ちとか負けとかそんなの関係ない。
ただ純粋に泳ぐ事が楽しい。