夢が繋げた未来~何度倒れても諦めないで~

「なに?」


赤星くんは振り向いてはくれたが、面倒臭そうに顔を顰めていた。
そんな彼を見ながら私は呆然と固まってしまう。
それもそのはず。だって別に話しかけるつもりはなかったもの。
なのに口が勝手に動いたという感じだ。
私自身さえ驚きを隠せない。

だけど、彼の背中を見た時、どこか哀しそうに見えた。
このまま放って置けば彼は消えてなくなりそうに思えた。

だから咄嗟に声を掛けていたのかもしれない。
そう思いながら何を喋ろうか考えていれば深くタメ息を吐かれる。


「用がないなら呼ばないで。
それにもうすぐ試合が始まる」


周りを見れば他の選手たちがボチボチと整列をしだしていた。
少し焦りながらも私も整列をする。
4コース、それが私の泳ぐ場所だった。
赤星くんは5コース。
高岡くんや平井くんと全く同じ場所だ。
そう思い関係者席を見上げれば高岡くんや先輩たちが目に映る。


「高瀬!!最初から飛ばしていけよ!!」


手を振りあげながら大声を出すのは高岡くんだった。
先輩たちも両手を振りながら応援してくれている。
私はそれに応える様に笑顔を浮かべて頷いた。
少し視線を横にずらせば先生が優しい笑顔で私を見つめていた。


「……」


言葉はないけどまるで『大丈夫ですよ』と言っている様な笑みだ。
先生にも笑顔を返して頷く。
それを見た先生も力強く頷き返してくれた。

大丈夫。
私は1人じゃない。

高岡くんや先輩たち。
それに先生が私を応援してくれている。
今までたくさん迷惑を掛けてきた分、泳ぎで恩返しをしなきゃ。


ふと横を見れば赤星くんは無表情でプールを見つめていた。
集中をしているからかもしれないけど平井くんの言う通り水泳が好きという気持ちは伝わってはこない。


「……赤星くん」

「……なに」

「よろしくね!
お互いベストを尽くして楽しく泳ごう!」

「……楽しく……?」


私の言葉にピクリと眉を顰める赤星くん。


「……いや、何でもない……」


少し気にはなったが試合が始まりそうだったので話すのを止めて集中する事にした。