「いやぁ~。
高岡・高瀬コンビは流石だな!!」

「ははっ!俺たち無敵っすから!!」


『なっ?』と私に笑いかける高岡くん。


「もちろん!」


私が頷けば先輩たちは私たちを抱きしめてきた。


「く……苦しい!!」

「せ……先輩……」


高岡くんと私が苦しさに耐えていれば聞きなれた声が私たちに降りかかる。


「皆さん、お疲れ様です」

「蒼井先生!!」


先輩たちは私たちから離れ先生の所へと駆け寄る。


「……」


私はそんな様子を少し離れたところで見ていた。


「お前はいかないのかよ?」

「……うん」


先生への恋心に気が付いたと言っても何も変わらない。
別に先生とどうにかなりたい訳ではないし、変わる必要もないもん。
でも、少し戸惑っている自分もいる。
恋愛経験もない私は、どうやって先生に接すればいいか分からなかった。
困り果てる私に高岡くんが心配そうに声を掛けてくれる。
いつまでも彼に迷惑を掛ける訳にはいかない。


「さ~て……出し物も終わった事だし泳ごうかな~!!」

「はぁ~?せっかくの文化祭だぞ?」


呆れた様に笑う高岡くん。


「だってさ!!
水球の練習でほとんど泳げてなかったじゃん!!」


少し泳ぐ事はあっても部活みたいにがっつり泳ぐ事はなかった。
だから今。


「すごーく泳ぎたいの!!」


私が大声で叫べばタメ息が聞こえてくる。


「この水泳馬鹿」

「うん!最高の褒め言葉ね」

「ば~か」


高岡くんはそう言いながらプールへと入っていく。


「泳ごうぜ!」

「もう!結局泳ぐんじゃない!!」


私は笑いながら彼を追いかける様にプールへと入った。


「競争しようぜ」

「……平泳ぎで?」


そんなの私が負けるに決まっているのに。
それに私は自由形がしたい。


「ばーか!それぞれの泳ぎでだよ」

「……平泳ぎで自由形に勝てると思ってるの!?」

「勝てる訳ねぇだろ!!」


思いっきり頭を叩かれ私は呆然と彼を見つめる。


「お前との勝負は楽しいんだよ。
勝ち負け関係なく」


そう言って高岡くんはスタートの準備をする。


「……ハンデいる?」

「ばーか!いらねぇよ」


私も準備をしながらニヤリと笑みを浮かべる。
そう言うと思った。
それでこそ高岡くんだ。


「よっし行くぞ!」

「うん」


私たちは同時に泳ぎだした。