「じゃあ何で先生が女子生徒に囲まれてた時、辛そうにしてたんだよ。
好きだからだろ?好きだから泣いたんだろーが!!」

「好き……だから……?」


高岡くんの言葉に頭が真っ白になる。

確かに、先生と女の子たちが一緒にいると胸が痛くなった。
哀しくて、苦しくて。
よく分からない気持ちに取り巻かれて泣いてしまった。


だけど。


「そんな訳……ない……。
先生を好きなんて、そんな……」


違う。好きな訳ない。
だって先生は教師で私は生徒で。
混乱する私に高岡くんは目を見開いた。



「本当に気が付いていなかったのかよ……」

「だって、私……」


誰かを好きになった事なんて無かった。
中学までは水泳一筋だったし、それからは恋愛どころじゃなかったし。
だから誰かを好きになるなんて気持ち、私は知らない。

だけど、これが“恋”だというなら納得はいく。

だって、先生と一緒にいると楽しくて、ドキドキして。
ずっと一緒にいたいって思うもの。
それに先生が哀しそうな顔をすると私まで辛くなる。


そうか私……。


「先生が好きだったんだ……」


初めて気が付いた淡い恋心。
トクントクンと弾む鼓動が先生への想いなのだと思い知らされた。