「そんなに泳ぎたかったら、そうですね……。
高瀬さんは自由形500本、高岡くんは平泳ぎ500本ですね」

「え?」

「は?」


私と高岡くんは同時に動きを止めて先生を見上げた。
それぞれ違うプールにいたが声がシンクロしたのが分かる。


「泳ぎたいんですよね?
遠慮しないで、思う存分、泳いで下さい」

「あ、あの……」

「せ、先生……」

「明日からは学校が始まりますし。
部活時間は大幅に減ってしまいますからね」


先生は『うんうん』と頷きながら笑った。
優しいその笑顔の裏には、悪戯っ子の様な顔が隠されているのを私と高岡くんは知っている。
戸惑う私たちを裏腹に先生は嬉しそうに笑っていた。


「……はい……」

「分かりました……」


高岡くんと私は先生に何も言い返すことが出来ずに泳ぎを再開する事にした。
練習内容は大変だけど、辛くはない。
だって泳ぐ事は私の生甲斐だから。