夢が繋げた未来~何度倒れても諦めないで~

「平井。
もうやめろ……行くぞ」


三井先生は平井くんを止めると私たちに背中を向ける。
その背中は何処か戸惑っている様に見えるのは気のせいだろうか?


「三井先生!!」


気付いたら私は遠くなっていく三井先生の背中を呼び止めていた。


「高瀬さん?」

「高瀬?」


先生も高岡くんもビックリしている。
でも私が1番驚いている。
別に呼び止めるつもりはなかった。


「……」


三井先生は歩くのをやめる。
振り向きはしなかったが私の言葉を待っているのが分かる。
何を言おうか、一瞬の間に頭がグルグルと回転し言葉を探した。
そしてやっと答えを見つけた。


「私はあなたを許します」

「……は?」


その言葉に高岡くんと先生。
そして三井先生は固まっていた。


「確かに私は一時期水泳が嫌いになりました。
でもそれはあなたのせいじゃない。
自分の心の弱さが全ての原因だった」


三井先生。
私は1度でもあなたを嫌った自分が憎い。
自分の弱さから逃げ出した自分が情けない。


「……」


三井先生は何も言ってくれなかった。
でも私は構う事なく話し続ける。


「今度の大会で私は……。
あなたに認めて貰える様な泳ぎをします。
次が駄目ならその次の大会で!
……もし……あなたが私を認めてくれる日がきたら……」


私は口を閉じてニコリと笑顔を浮かべる。


「また……私に水泳を教えてください」


三井先生は本当に良いコーチだったから。
出来る事ならあんな事件が起こる前に戻って最初からやり直したい。


「馬鹿だなお前は……。
昔も今も……何1つ変わってない」

「三井先生……?」


先生は振り返ることなくそう呟くとスタスタと歩いてしまった。



「高瀬さん……。
キミは本当にいい子ですね」

「いい子っつーか……。
……お人好しっすね」


先生は優しく微笑みながら、高岡くんは呆れながら笑っていた。


「……僕……ちょっと用事が出来ました。
2人とも少し待っていて下さい。
お家まで送っていきます」


そう言いながら先生は三井先生や平井君たちが歩いて行った方に消えていく。
私と高岡くんの2人きりになった。
静かな空間に高岡くんは私に呟いた。


「お前って本当にお人好しだよな」

「は!?さっきもお人好しって……」


私はお人好しなんかじゃないのに。


「俺の代わりに大会に出たり。
お前に酷い事をした三井を許したり。
……俺には考えられねぇよ」


高岡くんの言葉に私はゆっくりと首を横に振るった。