夢が繋げた未来~何度倒れても諦めないで~

「高瀬 真希だって。
俺たちと同じ年で“荒城中学の天才少女”って騒がれてた奴」


私の代わりに平井くんが答えるが、彼は興味なさそうに私から視線を外した。


「それより三井先生。
部員全員が待っています、急ぎましょう」

「はあ?お前と同じ自由形の選手だぞ!
ちょっとはライバル宣言とか……」


平井くんが赤星くんに話し掛けるが彼は知らんぷりをして私の方を見た。


「俺は誰にも興味がない。
お前が過去に天才と呼ばれていようが、所詮は3位だろう?」


冷たい目が私と胸元にかかっていた銅メダルに降り注ぐ。
こんなに感情が籠っていない目を初めて見たかもしれない。
冷や汗が背中を伝う中、私は彼を見つめる事しか出来なかった。


「おいおい、何か勘違いしてないか?
コイツは自由形では出ていない」

「高岡くんの言う通りです。
彼女が自由形で大会に出た時に、表彰台の1番上には一体誰が乗るんでしょうね?」


私を庇う様に高岡くんと先生が言葉を放った。
2人が私を信じてくれている事は分かる。
だから私も彼らに応えなければいけないんだ。


「貴方の泳ぎは、春の大会で1度見たわ。
正直に言うと、私が勝てるかどうかは分からなかった」


私の言葉に先生も高岡くんも驚いていた。
自由形の事で私が弱音を言うなんて思ってもいなかったのだろう。
私だって、そうだ。
負ける事は勿論、弱音を吐くなんて思ってもいなかった。

でも、彼が凄い選手だという事はあの大会で痛いくらいに分かった。
それに彼の首元にかかる金メダルは、今日のこの試合も彼が制したという証拠だ。
実力だって折紙つきだ。
だけど。


「私は2度と負けないわ、相手が誰であろうと。
水泳人生で敗北を味合うのは今日が最初で最後だから」


そう言って唇の片端を引き上げた。


「興味はないがひとつだけ忠告。
俺に勝ちたかったら俺より早いタイムを叩き出せ。
俺と同じ様なスピードだと身長差で必ず俺が勝つから」


それだけ言うと赤星くんは私から目を逸らした。


「上等。
それと身長なんて水泳には関係ない。
早い方が勝つ、それだけよ」

「そうだ!高瀬の言う取りだ!
俺らはお前ら何かに絶対に負けねぇ!!」


高岡くんは平井くんと赤星くんを睨みつけた。
背が高い2人に対して私と高岡くんは小さい。
だけどそんな事は関係ないのだ。


「はっ、チビ共に思い知らせてやるよ。
身の程知らずってことをな」


平井くんは怪しげな笑みを私たちに向けていた。
赤星くんは相変わらず興味なさそうにそっぽを向いている。